格差社会の現実

冷戦とその終焉から噴き出た技術革新とグローバル化の激流がさらなる勢い(圧力)を増して、変化に乏しく多少の不自由や不便はありながらも安定的な社会を維持、統制していた堰なるものを呑み込みました。これが、いわゆる規制緩和であり、世界経済が一斉に市場原理主義へと舵を切る号令でもありました。これによって、私たちは、激しい競争にさらされ、変化の激しい不安定な社会の到来を受け入れました。

格差の拡大。富がさらなる富を呼び、貧困がさらなる貧困を呼ぶ社会、一瞬にして富裕層から貧困層へと転落する危険性は絶えずあっても、生まれながらの貧困から脱出する可能性や希望を夢にすら持てない社会、それが格差社会の実体です。

自然界は文字通り弱肉強食の世界ですが、自然界であれば確実にライオンの獲物となるはずのシマウマが動物園においてライオンと共存しているのはなぜでしょうか?このように考えると、統制なき資本主義である市場原理主義と格差社会の因果関係をあえて説明する必要はないでしょう。

とは言え、もはや、時計の針は元に戻りません。私たちは、ワーキング・プアやシャッター通りといった現実の問題から目を背けることはできないのです。「普通に生きれば普通に幸せになる」という総中流社会の特権を剥奪され、「普通に生きれば確実に不幸になる」時代を生き抜かざるを得ないのです。